セントラルパークからブロードウェイを歩いてきた時だった。
何処からともなく男がポリのバケツとブリキの缶をもってきて、いくぶん人の通りを避けられるところにそれらを置いたかと思うと、突然激しいリズムを刻み始めた。目にも止まらぬスティックの早さ。大きく、小さく響き渡るドラムの音に、通りすぎた人も振り返り、すぐに人だかりの山ができた。
よく見ると、彼の手にしているスティックも、バケツとブリキ缶同様、何処かで拾ってきた木の棒、という感じだった。
彼のリズムは、一段と早く、大きく、激しくなっていく。
自己を表現するのに特別なものはそうはいらない。自分の中から何かしら溢れ出してくるもの、ただそれだけ。
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